スペシャル対談 ものづくりを考える VOL.2

お客様の手に商品を届けるために

工藤
下駄の時は社会の受け皿というか、売り先、チャンネルがなくて、どうするかという話だったと思いますが、この商材に関しては、実際どういう工夫をされましたか?
伊藤
まず、これまで小売店に卸すということを一切したことが無かったので、販売価格である「上代」や卸価格となる「下代」という言葉の意味を知ることからのスタートでした。最初に表参道にあるセレクショショップのバイヤーさんとの打ち合わせで、値付けの相談をしたんですが、正直、どのくらいの金額が妥当なのかも分からなかったので、ひとまず「私たちは原価これぐらいで販売したいと思うと伝え、その提示に「それは高過ぎるけど、これだったら…」と、というやりとりがあり、結果、先方が提示をしてくれた内容が割と良いラインだった、というところで、その場で値段を決定して、販売を開始し始める、という流れを組み立てることができたんです。それが12月ぐらいのことでしたね。
工藤
最初は表参道の1つのセレクトショップからですか?
伊藤
そうです。
工藤
初日はお店に行きましたか?
伊藤
商品を納める際、直接私がお店に伺い、納品をしてきました。店頭に商品を並べた様子も写真で送っていただいたりして、その時は「いよいよかぁ」という思いになりました。その後、すぐにお電話をいただいて、「1冊売れました!」と。その時ばかりは社員たちも非常に感動して、私も喜んだことを覚えていますね。
まさか、お客様がうちの商品をお金を払って買ってくださるということが考えられなかったので。
工藤
それは、どの商品ですか?
伊藤
白のメモブロックですね。ビックリしました。ちょうどクリスマスシーズンに入るところでしたね。

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工藤
売行き的には、どんな感じでしたか?
伊藤
まぁ、ビックリするほどの動きはなかったですね。ただし、非常に反応がいいな、と感じたのは覚えています。特にデザインに関してですが。文房具としては、一冊800円のメモ帳を今まで私も買ったことがなかったし、リフィルで差し替えもできない、というものでもありましたが、それでもそういったものに価値を認めてお金を払ってくださるお客様がいるということに驚き、もう少しきちんとやらなければいけないな、という思いも改めてこみ上げてきましたね。
工藤
そこからチャンネルを増やしていくということですね。
伊藤
そうですね。その後、国内の展示会にもいくつか出展しました。
工藤
バイヤーに実際に見てもらって、取り扱ってもらうお店を増やすということで?
伊藤
そうですね。最初は先ほどもお話しした表参道のセレクトショップからの始まりだったんですが、その次は銀座の伊藤屋さんに直接商談に伺う機会があり、割とスムーズに商品を仕入れていただき、店頭にも並べていただくことができまして…何回か営業にも伺いました。そこで文具市場というものがあることも初めて知り、いろんなメーカーさんや問屋さんがあって、こういったラインナップで、価格帯は皆さんこのぐらいなんだな、海外ブランドはこうなんだな…と、少しずつ学んできました。
工藤
ちなみにグッドデザイン賞はいつ頃?
伊藤
2010年です。2009年末に商品の販売をスタートさせてから、10ヶ月後ぐらいですね。
工藤
それは典型のデザイナーが出そうと?
伊藤
いえ、ある展示会がきっかけで。墨田区の石原にあるギャラリーで典型さんたちと開いた小さな展示会でのことでした。ビッグサイトの本審査会場で、家電、車、バス、マンション、雑誌等、と様々なジャンルのプロダクトがある中で、出展させてもらえる機会をいただくことができました。
工藤
賞自体、審査員が決めるんですか?
伊藤
そうなんです。審査員が全てジャッジします。

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工藤
もう、入賞はするという感じだったんですか?
伊藤
出すときは、もう受賞するつもりで出してましたね。

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