スペシャル対談 ものづくりを考える VOL.1

今回の対談では、受注産業と言われる印刷・製本業界の中でも、高い技術力とものづくり精神で様々な製本加工で付加価値を生み出している有限会社篠原紙工の篠原社長に、「提案型ものづくり」の秘訣や、製本業界への思いを語っていただきました。また、職人時代の貴重なお話や社長としての思いもお聞きしました。

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「提案型ものづくり」を支えるものとは?

工藤
篠原さん、今回の対談どうぞよろしくお願いします。
篠原
こちらこそよろしくお願いします。
工藤
今年2月に篠原さんが社長に就任されて、「会社をこうしていきたい」みたいなものは何かありますか?私が感じていることは、この業界の人たちはみんな楽しそうじゃないんですよ。
篠原
うん、凄くわかります。
工藤
働いている人たちが、つまらなさそうに働いている。そんなことないですか?
篠原
確かに周りを見回したら、楽しくなさそうに働いているところが多いですよね。
工藤
もっと楽しんでやればいいと思うんですよね。だから、そんな感じで「楽しく働いているな」という会社さんに出ていただいて、「楽しい」という運営を勉強しようかなと思っているんです。それで、何か新しく会社を変えていくとかで、何か考えられているのかなと。
篠原
やはりおっしゃるように、僕は入社してから専務になるまでは製本屋の仕事が楽しくなかったんですよ。でも、色々成長していく中で、「楽しくないな」というのを、自分で見つける努力を続けてきました。それが表面化してきたのが、たぶん専務に就任した時です。
とにかく、「これをやったら楽しい」「これをやるとお客さんが喜ぶ、嬉しい」みたいなことをやっていました。

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工藤
それは、専務になって営業に出たからということですか?
篠原
それは大きいですね。一番のきっかけは、ノリトジックシステムという機械を開発して、仕事が受注にできず、何とかしてこいつの仕事を取らないといけないという所からでした。
工藤
ノリトジックというのは、「糊で綴じる」から「ノリトジック」なんですよね(笑)。

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篠原
そうです(笑)。仕事を取るために、これじゃいかんと思って表に出るようになったら、仕事を取れるようになってきて、現場とお客さんのパイプ役みたいな立場になって、なんか楽しく思えるようになってきました。お客様が喜んでくれることを現場に伝えると、現場も楽しそうに仕事をしだしたんですよね。
そういうのが続いたことで、楽しく思えるような、おぼろげながら理想とする姿は見えてきて、専務という立場だから比較的好き勝手にやっていました。でも、2月に社長になってからは楽しいだけじゃなくて、楽しくても商売にならないと続けられない。今の流れが継続して、この先も続けていけるような仕組みや仕事の仕方をつくらなければと思っています。

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可能性から考えるものづくりの精神

工藤
最近、製本のニーズというのは変わってきましたか?
篠原
そこは、ずっと昔から変わりません。お客さんが、「どこまでできるか」というのがわからないから、「こういう風に作って欲しい」と要望をぶつけてきます。でも、よくよく聞いてみると、「本当はこれをやりたかったけれど、たぶんできないと思うから、これをやって」という場合がある。
普通に仕事をしていると、「本当はこういうことをやりたかった」というのは知れなくて、そのまま納めてしまう。それが慢性化すると何も感じなくなって、そこで終わってしまう。うちは比較的、「できる可能性」をいつもお客さんに伝えています。うちとお付き合いをしてもらっている方に関しては、今まで「ここまでしかできないだろう」と勝手に線引きしていた人も、「もしかしたら、こんなこともできますか?」と聞いて頂ける様になりました。
工藤
篠原さんとお会いしたきっかけは、ハイデルさんに紹介されて会ったんですよね。ちょうど変わった仕様のものを作らないといけなくて、篠原さんにご相談したんですよね。
篠原
明祥さんがうちに来てくれたんですよ、3人か4人ぐらいで。
工藤
そう、それが最初ですよね。
こういう変わった製本は、どういうところから発想して、できるようになっていくんですか?

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篠原
展示会をやるからパンフレットを作って欲しいという相談で、「今度、展示会をやるからパンフレットは篠原さんに考えてほしい。打ち合わせを来週やるから来られませんか?」と電話をいただきました。
その電話で、どういうものにしたらよいかを考えてほしいと言われて、土曜と日曜で何となく考えていくわけですよ。「2つの展示会場か…」と思って、いくつか案を考えたうちの1つです。
工藤
これは機械を熟知しているからこそできる発想ですよね。通常の営業マンが行ってできる仕事ではないですよね。
篠原
たぶん(笑)。
工藤
見たときに、そう思ったんです。デザイナーとかが、こうデザインできないと思うんですよね。結局、できるかどうかわからないから。
だから、これを見たときに他の製本屋とは明らかに違うと感じましたね。
篠原
ありがとうございます。自分で「こんなのを作りたい」と思った時に、できるかできないかは、ポンとでくるんですよ。恐らくずっと現場でやっていて、機械を熟知しているからできているのかなと。
たぶん皆さん、「こういうのができないかな」と思って、機械で試しますよね。「できなかった、できません」となるけれども、物を作る時はやり方は絶対1通りではない。これがダメなら、一回ここに戻るとか、道はたくさんあるんですよ。すべての道を行けるか、行けないか。確認したかというと、たぶんしきれていない。1つか2つの道を行って、「ああ、ダメだ」で終わってしまっている気がします。
そこが、人よりちょっとしつこい性格というか(笑)。

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工藤
結局、何でもそうだと思いますが、物をつくっていると、すぐ行き止まりに当たりますよね。それを乗り越えると新しい発見があって、楽しかったりするけれども、全ての会社がみんなそういう感じではないですよね。
篠原紙工は、なぜそうなのでしょうか?
篠原
たぶん、うちの社員もそうですけど、凄くうちの親父の影響を受けています。
うちの親父は工夫するのが得意だったんです。普通は「1、2、3」というやり方をするものを、「3、1、2」の順番で折ってみろ。同じ形なると。一見無茶なことを言うけれど、それを受け止める職人さんがいて、「ちょっとやってみようか。ああ、できた」というのが、昔からうちの会社にあったんです。
物心ついた時から、それを何となく見ていて、何かやろうとしたときに、自然に何パターンもやり方を考える癖ができていたんですね。

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