スペシャル対談 ものづくりを考える VOL.1

今回の対談では、受注産業と言われる印刷・製本業界の中でも、高い技術力とものづくり精神で様々な製本加工で付加価値を生み出している有限会社篠原紙工の篠原社長に、「提案型ものづくり」の秘訣や、製本業界への思いを語っていただきました。また、職人時代の貴重なお話や社長としての思いもお聞きしました。

品質と生産性を両立させる難しさ

工藤
難しいことにチャレンジするから、普通の仕事のクオリティが高まるのか。工夫して自分たちで新しいものにトライしている会社だと、通常の仕事がえらく簡単に感じて、クオリティが高くなっていくような効果はありますか?
篠原
たしかに、難しい仕事をやった時は、通常の仕事に対しても良い影響はあります。クオリティは上がると思うし、何にしても難しいことにチャレンジするということは、それだけ1つの機械、技術に対して突き詰めて作業をしているので、1人1人のオペレーターの機械に対する理解力やスキルは明らかに上がりますね。
ただ、生産性はむしろ落ちる方向に行く。生産性が高い仕事ばかりやっている時は、機械の回転数を上げて仕事することを求めるんですよ。前回は1万回転だから、今回は1万500回転いかないかなとか。
工藤
ああ、そういうのもやっているんですね。
篠原
やっていましたけど、そうならなくなってきます。難しいことをやっていると生産性よりクオリティとか、どれだけ注意を払ったかでやっていくわけです。それで、簡単な仕事をやった時に、スキルは上がっているけれども、今まで以上に色々な所を見だすので。

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工藤
なるほど、目についちゃうと。
篠原
はい。目についてやることが増えれば、当然生産性は落ちるわけですよね。
言っても、うちもそういうやり方をしだして、そんなに長い歴史があるわけではないので、その先にあるのかもしれないし、そこはわからないですね。ただ、1つの仕事をやっている時の平均値なんか取っていませんが、僕の感覚では5年前よりは落ちているかな。ただ、それは手を抜いて落ちているのではなくて、今まで以上に手をかけた結果、落ちているんですよ。
だから、経営者としては難しいんですよね。「回転を上げろ」ということは、それだけ違う方向に注意力を向けさせるわけだから、何とも難しいですね。

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工藤
なるほど。でも、両方実現しないといけないから難しいですよね。
篠原
結局のところ、バランスだと思います。一番初めに言った、長く続くとか、ちゃんとビジネスになるような仕事の仕方というのをしたいというのは、うまくバランスが取れて、問題もクリアになった時かなと…。

経営者としての思い

工藤
その人にとって難しい仕事というのがそれぞれありますよね。何か篠原流の「この社員にお願いするかな」とか「やらせてみようかな」みたいなことはありますか?
篠原
一応、ありますね。「これは誰にやらせた方がいいかな」というのはあって、バラつきはありますよ。この人にばかり頼むという人もいるし、全員に満遍なくはいかないですね。
工藤
やはり、難しいことにチャレンジするスタッフのほうが成長しますか?
篠原
します。私もそういう人に仕事を任せますし。やっぱりわかるわけですよ。僕が「これをやって」と言った時に、言われたからやっているのか、言われたからやっているけれども、それを自分の中でうまくモチベーションに変えている人というのがいて、それは見ていてわかるんですよね。そうすると、やはりそっちの人に頼みますよね。

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工藤
篠原さんは技術の会社だから、「職人が偉い」みたいなところがあるじゃないですか。その職人が気持ちよく働いてもらう、楽しく働いてもらうために心がけていることはありますか?
篠原
話す内容にもよりますが、会社の経営者として物を話す時は、やはり経営者として話すけれども、現場に入れば社長じゃなくて、同じ目線で話すようにします。例えば、折りの話をしていれば、折りのオペレーターとして会話をするようにしていますね。「やれ」とか、「何とかしろ」とかじゃなくて、僕もずっと現場でやってきたので、その当時は現場の人たちと、「これはどうしようか。こうやったらダメかな、ああやったらダメかな」というようにやっていたので、その時の感じで話しますね。
工藤
どちらにしても、社員が楽しく働いてくれないと、良いものができないですよね。
篠原
そうですね。楽しく働いてくれないと良いものができないし、私も会社をやっていて、何のために仕事をしているかというと、やはり社員が幸せになってほしいと思っているからなんです。ここで働いている社員みんなが幸せになってほしいと思う。少なくとも働いているその時間つまらなかったら、不幸せじゃないですか。
工藤
現状の製本市場とか、印刷業界も暗い話が多いじゃないですか。
篠原
そうですね、下がっていますね(笑)。
工藤
価格競争は激しいし、印刷通販が出てきちゃったからとか、色々ありますよね。外部環境に関しては、どのように思っていますか。「そんなの関係ない」という感じですか。
篠原
いや、そんなことないですけどね。まあ、思うことはいっぱいありますけど(笑)。

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工藤
昔と同じやり方でというのは、自分たちの親父と同じやり方で、今後30年間とかやっていけるのかという話で、「やっていける」というのは、別に細々やっていくわけではなくて、社員も含めて幸せにしていけるのかという話ですよね。そのなかで、変わっていかなければいけないところもあるということで言うと、どのようにやっていこうと考えていますか?
篠原
うちは、親父がずっとやってきた会社で、跡取りとして継いで、いま社長になったけれども、親父は成功したと思うんですよ。起業して、ここまで会社を成長させて。
工藤
あんな大きい製本会社はなかなかないからね…。
篠原
ただ、それは、うちの親父の時代の、うちの親父のやり方であって、それをそのまま継続しても、絶対どこかで破綻すると思っています。だって、そもそも、僕と親父で考え方が違うから、違う考え方の人間が同じやり方をしたら、絶対おかしなことになる。僕が引き継いだ時からは、自分が一番良いと思えることをしやすい会社、しやすいお客さんに変えていかないと、判断もしづらくなるし。
それが、先ほど言った、働いている社員がどうやったら楽しく仕事をできるかとか、なおかつ、それが続けていけるか。どうやったらお客さんに喜ばれるか。まあ、そこは一緒なんでしょうけどね。結局考えていることは、ただやり方が違うのかなという気はしますね。

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